消えない傷41話
無数の雨粒が降り注ぐ音が聞こえ、
滲んで歪む世界が車の窓から見えている。
車内では運転席に秋月と、その斜め後ろにある
後部座席に大きな体をした肥満生徒、
一盛 光(いちもりひかる)がいた。
秋月は後部座席を振り返りながら無言だった。
返す言葉が見つからない。
…何かを話さないと。焦りと鼓動が高まる。
…これは罰なのか?
小林が肥満少年、一盛に猥褻な行為をするのを
何もせず見ていた…いや、それを見て…
その後も何も見ていない事にしようとした、
自分への…罰。
沈黙がどれほど続いたかは解からなかったが、
再び話し始めたのは一盛だった。
一盛の視線は秋月のいない窓の外のどこかへ
向けられており、その声は怯えたように震え、
かすれている。
「先生…、だ、誰かに…話しましたか?」
秋月の意識は、その言葉に対してどのように返答すれば
自分の身を守れるのか…、ただそれだけを考えて、
言葉を探していた。そしてようやく搾り出す言葉。
「言ってない…。」
その言葉に一盛は秋月の方へ真っ直ぐに向き直り、
すがるような声で言った。
「…ほ、本当ですか?」
大きな体をしているが、今にも泣き出しそうな顔だ。
普段の秋月なら、その顔と表情に興奮しているだろう。
一盛は赤ん坊をそのまま大きくして、太らせたような
可愛らしいベビーフェイスと豊満な肉体を併せ持っている。
だが、その顔を見る秋月の心に、今はそこまで余裕がない。
秋月は無意識に考える。
この子はどうやら、自分を責めているわけではない。
…だが、まだ油断はできない。
「じ、じゃあ、だ、誰にも言わないで下さい!!」
秋月のそんな考えを知らない一盛は、少し興奮気味に
秋月に懇願する。そして泣き出しそうな声で続ける。
「あんな事がバレたら学校にいけなくなっちゃいます。…お願いします、先生。」
その一盛の切実な願いに、
秋月はゆっくりと自分の安全を確信していく。
それでも慎重に言葉を選びながら答える。
「大丈夫、言わないよ…。」
すると、一盛の潤んだ瞳から涙がこぼれた。
両目からこぼれる涙は一盛の白い肌をつたい、
可愛らしい丸いアゴまで濡らして、落ちる。
そして何度も、ありがとうございます、と言った。
だが、一盛が泣きながら感謝の言葉を口にするたびに
秋月の心は、短い棘が刺さるような痛みを感じる。
彼に感謝されるような事を自分はしていない。
自分は…ただ怯えるばかりの汚い大人だ…。
そう思いながら秋月は、そっとハンカチを差し出す。
一盛はハンカチを手に取り、また感謝しながら涙を拭く。
まだ時々、嗚咽しながら肩を震わせている。
そんな一盛を見つめていた秋月が突然、ハッと驚く。
フラッシュバックのように、一盛が小林に猥褻な行為をされている時に見た光景が脳裏に浮かぶ。
艶かしくも豊満な一盛の肉体。大きな胸とピンク色の乳首。埋もれている小さな男根。
「…先生?」
その声にハッとさせられる。
「なんでもないよ…、大丈夫。…そうだ、もっと話がしたいから前に座らないか?」
そう言って助手席をポンポンと優しく叩く。
一盛はとくに疑う事も無く、言うとおりに助手席に座った。
雨で濡れたアスファルトに信号の緑の光が反射している。
二人の乗った車が再び動き始める。
↓ 押して、頂けると幸せです。
どうかよろしく m(._.)m お願いします。
滲んで歪む世界が車の窓から見えている。
車内では運転席に秋月と、その斜め後ろにある
後部座席に大きな体をした肥満生徒、
一盛 光(いちもりひかる)がいた。
秋月は後部座席を振り返りながら無言だった。
返す言葉が見つからない。
…何かを話さないと。焦りと鼓動が高まる。
…これは罰なのか?
小林が肥満少年、一盛に猥褻な行為をするのを
何もせず見ていた…いや、それを見て…
その後も何も見ていない事にしようとした、
自分への…罰。
沈黙がどれほど続いたかは解からなかったが、
再び話し始めたのは一盛だった。
一盛の視線は秋月のいない窓の外のどこかへ
向けられており、その声は怯えたように震え、
かすれている。
「先生…、だ、誰かに…話しましたか?」
秋月の意識は、その言葉に対してどのように返答すれば
自分の身を守れるのか…、ただそれだけを考えて、
言葉を探していた。そしてようやく搾り出す言葉。
「言ってない…。」
その言葉に一盛は秋月の方へ真っ直ぐに向き直り、
すがるような声で言った。
「…ほ、本当ですか?」
大きな体をしているが、今にも泣き出しそうな顔だ。
普段の秋月なら、その顔と表情に興奮しているだろう。
一盛は赤ん坊をそのまま大きくして、太らせたような
可愛らしいベビーフェイスと豊満な肉体を併せ持っている。
だが、その顔を見る秋月の心に、今はそこまで余裕がない。
秋月は無意識に考える。
この子はどうやら、自分を責めているわけではない。
…だが、まだ油断はできない。
「じ、じゃあ、だ、誰にも言わないで下さい!!」
秋月のそんな考えを知らない一盛は、少し興奮気味に
秋月に懇願する。そして泣き出しそうな声で続ける。
「あんな事がバレたら学校にいけなくなっちゃいます。…お願いします、先生。」
その一盛の切実な願いに、
秋月はゆっくりと自分の安全を確信していく。
それでも慎重に言葉を選びながら答える。
「大丈夫、言わないよ…。」
すると、一盛の潤んだ瞳から涙がこぼれた。
両目からこぼれる涙は一盛の白い肌をつたい、
可愛らしい丸いアゴまで濡らして、落ちる。
そして何度も、ありがとうございます、と言った。
だが、一盛が泣きながら感謝の言葉を口にするたびに
秋月の心は、短い棘が刺さるような痛みを感じる。
彼に感謝されるような事を自分はしていない。
自分は…ただ怯えるばかりの汚い大人だ…。
そう思いながら秋月は、そっとハンカチを差し出す。
一盛はハンカチを手に取り、また感謝しながら涙を拭く。
まだ時々、嗚咽しながら肩を震わせている。
そんな一盛を見つめていた秋月が突然、ハッと驚く。
フラッシュバックのように、一盛が小林に猥褻な行為をされている時に見た光景が脳裏に浮かぶ。
艶かしくも豊満な一盛の肉体。大きな胸とピンク色の乳首。埋もれている小さな男根。
「…先生?」
その声にハッとさせられる。
「なんでもないよ…、大丈夫。…そうだ、もっと話がしたいから前に座らないか?」
そう言って助手席をポンポンと優しく叩く。
一盛はとくに疑う事も無く、言うとおりに助手席に座った。
雨で濡れたアスファルトに信号の緑の光が反射している。
二人の乗った車が再び動き始める。
↓ 押して、頂けると幸せです。
どうかよろしく m(._.)m お願いします。