肉月~ニクツキ 25
夜11時頃。
外で雨が降っている音が、田中悠の部屋に微かに聞こえている。
悠は丸い身体を大の字にして、ベッドに寝転んでいた。
胸には麻紐のネックレス。赤い石と話している。
「どうして宗助くんと僕に、公園で知らない男の人達を見せたんだよ!?」
悠が非難するように言うと、悠の脳に声がする。
その声は男の声だ。多分、悠よりも大人の男の声…。
はっきりとは解らないが悠はそんな印象を持っていた。
「オレが直接やったわけじゃない。まぁ、間接的にはやってるかもしれんが。」
悠は石の言葉を脳内で反芻したが、理解不能といった表情だ。
赤い石はヤレヤレといった声で続ける。
「以前に体育祭の実行委員に選ばれるようにしただろ?」
それはすぐに思い出す事ができた。
数日前のホームルームで、どうやったのか解らないが
担任教師の意識を操り、宗助と自分を体育祭の実行委員に
してくれたのだ。おかげで殆ど話をした事がなかった宗助と、
少しだけ話せるようになった。
「そこから歯車が狂ったのさ。普通なら無い事が今後も、きっと起きる。全てはお前の望んだことだ。」
それを聞いた悠は驚きながらも、
大きな声で言う。
「そ、そんな事、望んで無いよ!!迷惑だよ、僕はただ宗助くんと…」
だが、石は返事をしなかった。
普通の宝石のように透明な輝きを放っているだけ。
それから悠はしばらく考えた後に、眠ってしまった。
翌日。学校の窓から見る景色は灰色。
雨が降ったり止んだりを繰り返している。
田中悠は昨日の赤い石の言葉など忘れて、
いつもどおりの学校生活をおくっていた。
だが…昼休みになりトイレに行った際に、
昨日の言葉を思い出す事になった。
悠がトイレを済ませて、洗面台で手を洗っていると、
隣に太った生徒が手を洗っている事に気付く。
悠がなんとなく、顔を見ると、
高級そうなハンカチを口に咥えている、太った生徒…
いや、どこかで見たことがある…。
思い出そうとした悠の頭にすぐに、先日の光景…
公園で「偶然」に見かけた二人の男達の見せた光景が浮かぶ。
【この人、あの時の…】
隣で手を洗っている太った生徒は
裸になって大きな男のペニスを咥えていた男だ。
言葉も出ないほど、驚く悠。
だが、目の前の太った生徒は何事も無かったように
ごく自然に手を洗っている。
悠も冷静になり、この生徒を近くでよく見てみる。
整った切れ長の眉と、その眉の手前で自然に整えられた髪、
そしてキレイな肌が、いかにもお坊ちゃまという印象だが…。
その印象と矛盾して唇が少し厚く、目が腫れたような一重。
悠は太った男子が好きなので全く不快ではなかったが、
ほとんどの人は彼を「デブで不細工」と見ると思った。
悠はこの太った生徒に対して何故あんなところで、
あの様な行為をしていたのか。聞いてみたい気持ちになる。
だが、すぐにその気持ちを抑えて、目線を自分の手元に戻した。
…自分があの場にいた事を気付かれたくない。
なぜなら自分だけでなく、宗助もいたのだ。
もし、何かおかしな事になっては困る。関わらない方が良い。
そう思い、悠は静かに手を洗い終えて蛇口を閉め、トイレの出口へ向かう。
太った生徒は、まだ手を洗っているようだ。
悠は少し安心して、トイレから出ようとした、その時。
「田中悠君…ですよね?」
悠は、ビクッと丸い身を震わせて驚く。
そして振り向くか、無視して立ち去るか、
ほんの瞬間で何度も葛藤したが、振り返ることにした。
同じ学校なのだ。ここで逃げても意味が無い。
ゆっくりと振り返った悠の目に、
先程の太った生徒が、まっすぐこちらを向いて
立っている姿が飛び込んできた。その表情は薄く笑っているが、
目つきが悪いので、何か企んでいるようにも見える。…そして。
「今日の放課後、先日の公園に来て下さい。…一人で。」
それだけを言うと、立ちすくむ悠の横をすり抜けて、
太った生徒は、トイレから出て行ってしまった。
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外で雨が降っている音が、田中悠の部屋に微かに聞こえている。
悠は丸い身体を大の字にして、ベッドに寝転んでいた。
胸には麻紐のネックレス。赤い石と話している。
「どうして宗助くんと僕に、公園で知らない男の人達を見せたんだよ!?」
悠が非難するように言うと、悠の脳に声がする。
その声は男の声だ。多分、悠よりも大人の男の声…。
はっきりとは解らないが悠はそんな印象を持っていた。
「オレが直接やったわけじゃない。まぁ、間接的にはやってるかもしれんが。」
悠は石の言葉を脳内で反芻したが、理解不能といった表情だ。
赤い石はヤレヤレといった声で続ける。
「以前に体育祭の実行委員に選ばれるようにしただろ?」
それはすぐに思い出す事ができた。
数日前のホームルームで、どうやったのか解らないが
担任教師の意識を操り、宗助と自分を体育祭の実行委員に
してくれたのだ。おかげで殆ど話をした事がなかった宗助と、
少しだけ話せるようになった。
「そこから歯車が狂ったのさ。普通なら無い事が今後も、きっと起きる。全てはお前の望んだことだ。」
それを聞いた悠は驚きながらも、
大きな声で言う。
「そ、そんな事、望んで無いよ!!迷惑だよ、僕はただ宗助くんと…」
だが、石は返事をしなかった。
普通の宝石のように透明な輝きを放っているだけ。
それから悠はしばらく考えた後に、眠ってしまった。
翌日。学校の窓から見る景色は灰色。
雨が降ったり止んだりを繰り返している。
田中悠は昨日の赤い石の言葉など忘れて、
いつもどおりの学校生活をおくっていた。
だが…昼休みになりトイレに行った際に、
昨日の言葉を思い出す事になった。
悠がトイレを済ませて、洗面台で手を洗っていると、
隣に太った生徒が手を洗っている事に気付く。
悠がなんとなく、顔を見ると、
高級そうなハンカチを口に咥えている、太った生徒…
いや、どこかで見たことがある…。
思い出そうとした悠の頭にすぐに、先日の光景…
公園で「偶然」に見かけた二人の男達の見せた光景が浮かぶ。
【この人、あの時の…】
隣で手を洗っている太った生徒は
裸になって大きな男のペニスを咥えていた男だ。
言葉も出ないほど、驚く悠。
だが、目の前の太った生徒は何事も無かったように
ごく自然に手を洗っている。
悠も冷静になり、この生徒を近くでよく見てみる。
整った切れ長の眉と、その眉の手前で自然に整えられた髪、
そしてキレイな肌が、いかにもお坊ちゃまという印象だが…。
その印象と矛盾して唇が少し厚く、目が腫れたような一重。
悠は太った男子が好きなので全く不快ではなかったが、
ほとんどの人は彼を「デブで不細工」と見ると思った。
悠はこの太った生徒に対して何故あんなところで、
あの様な行為をしていたのか。聞いてみたい気持ちになる。
だが、すぐにその気持ちを抑えて、目線を自分の手元に戻した。
…自分があの場にいた事を気付かれたくない。
なぜなら自分だけでなく、宗助もいたのだ。
もし、何かおかしな事になっては困る。関わらない方が良い。
そう思い、悠は静かに手を洗い終えて蛇口を閉め、トイレの出口へ向かう。
太った生徒は、まだ手を洗っているようだ。
悠は少し安心して、トイレから出ようとした、その時。
「田中悠君…ですよね?」
悠は、ビクッと丸い身を震わせて驚く。
そして振り向くか、無視して立ち去るか、
ほんの瞬間で何度も葛藤したが、振り返ることにした。
同じ学校なのだ。ここで逃げても意味が無い。
ゆっくりと振り返った悠の目に、
先程の太った生徒が、まっすぐこちらを向いて
立っている姿が飛び込んできた。その表情は薄く笑っているが、
目つきが悪いので、何か企んでいるようにも見える。…そして。
「今日の放課後、先日の公園に来て下さい。…一人で。」
それだけを言うと、立ちすくむ悠の横をすり抜けて、
太った生徒は、トイレから出て行ってしまった。
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