消えない傷50話
放課後の職員室。
二年生の担任教師達の会議に秋月の顔があった。
もう目前に迫った修学旅行の最終会議だ。
とはいえ、ベテラン教師達は何度となく
修学旅行を行っている。目的地は京都。
修学旅行の定番。それ程、話すこともないが、
今年の注意事項などを確認しあっていた。
秋月にとっては始めて聞く事ばかりなので
几帳面にメモをとり、旅行を時系列に細かくまとめていた。
事前に生徒に配るプリント類にも隅々まで目を通す。
「まぁ、こんなトコでしょう。」
一人のベテラン教師の声で会議が終わったが、
秋月はパソコンにメモしたことをまとめてから、入力していく。
そして入力したデータやスキャンしたプリント類を
クラウド上で確認出来るようにする。
これで旅行先でも自分のスマートフォンから確認出来る。
その様子を見ていた他の教師が
「秋月先生は本当に真面目だねぇ。」
と、感心したように言った。
秋月は苦笑いをしながら応える。
「準備するのが好きなだけですよ。」
作業を終えると、今度は数学準備室へ向かう。
先の授業の準備をしておきたかったし
、先輩教師達に降られた仕事というか、
雑用のたぐいを片付けなくてはならない。
数学準備室で一人、作業に没頭していた。
だが、しばらくして作業が落ち着いた頃、
秋月は何のきっかけも無く、
大きな肥満少年の一盛を想っている自分に気がつく。
彼に会いたい。話がしたい。
いや、一緒にいられるだけでもいい・・・。
そこで秋月は溜め息をつき、感情を消そうとした。
教師が生徒に抱く感情じゃない。
自分に言い聞かせるように、そう頭の中で考える。
そして不意に秋月は窓の外を眺めた。
数学準備室の窓から見える景色は校舎の裏側だったが、
真っ赤に紅葉した庭木や植え込みが美しかった。
その美しさに秋月は目を奪われる。…だが何故だろう。
秋月の心は痛みを感じていた。
一盛の笑顔や唇の感触や香りが勝手に頭に浮かんでくる。
そしてまた秋月は考えを消す為に、ゆっくりと目を閉じる。
少しの間、秋月は静かに目を閉じていたが、
疲れたように小さく溜め息をつくと、目を開けた。
いつまでもボサっとしているわけにはいかない。
秋月は首を振ってから、再び仕事に取りかかろうと、教材を開く。
…だが、10分後、秋月は全く集中出来ない自分に苛立っていた。
とにかく一盛に会いたい。
そう秋月は考えながら、窓の外を見る。
誰も近づかない、校舎裏が見える…。
もしかしたら、また一盛と小林が、あの校舎裏にいるんじゃないだろうか。
秋月は理由もなく、そう考えると、数学準備室を飛び出していた。
↓ ポチっとして押して、開いてくる窓を閉じる。
どうかよろしく m(._.)m お願いします。
二年生の担任教師達の会議に秋月の顔があった。
もう目前に迫った修学旅行の最終会議だ。
とはいえ、ベテラン教師達は何度となく
修学旅行を行っている。目的地は京都。
修学旅行の定番。それ程、話すこともないが、
今年の注意事項などを確認しあっていた。
秋月にとっては始めて聞く事ばかりなので
几帳面にメモをとり、旅行を時系列に細かくまとめていた。
事前に生徒に配るプリント類にも隅々まで目を通す。
「まぁ、こんなトコでしょう。」
一人のベテラン教師の声で会議が終わったが、
秋月はパソコンにメモしたことをまとめてから、入力していく。
そして入力したデータやスキャンしたプリント類を
クラウド上で確認出来るようにする。
これで旅行先でも自分のスマートフォンから確認出来る。
その様子を見ていた他の教師が
「秋月先生は本当に真面目だねぇ。」
と、感心したように言った。
秋月は苦笑いをしながら応える。
「準備するのが好きなだけですよ。」
作業を終えると、今度は数学準備室へ向かう。
先の授業の準備をしておきたかったし
、先輩教師達に降られた仕事というか、
雑用のたぐいを片付けなくてはならない。
数学準備室で一人、作業に没頭していた。
だが、しばらくして作業が落ち着いた頃、
秋月は何のきっかけも無く、
大きな肥満少年の一盛を想っている自分に気がつく。
彼に会いたい。話がしたい。
いや、一緒にいられるだけでもいい・・・。
そこで秋月は溜め息をつき、感情を消そうとした。
教師が生徒に抱く感情じゃない。
自分に言い聞かせるように、そう頭の中で考える。
そして不意に秋月は窓の外を眺めた。
数学準備室の窓から見える景色は校舎の裏側だったが、
真っ赤に紅葉した庭木や植え込みが美しかった。
その美しさに秋月は目を奪われる。…だが何故だろう。
秋月の心は痛みを感じていた。
一盛の笑顔や唇の感触や香りが勝手に頭に浮かんでくる。
そしてまた秋月は考えを消す為に、ゆっくりと目を閉じる。
少しの間、秋月は静かに目を閉じていたが、
疲れたように小さく溜め息をつくと、目を開けた。
いつまでもボサっとしているわけにはいかない。
秋月は首を振ってから、再び仕事に取りかかろうと、教材を開く。
…だが、10分後、秋月は全く集中出来ない自分に苛立っていた。
とにかく一盛に会いたい。
そう秋月は考えながら、窓の外を見る。
誰も近づかない、校舎裏が見える…。
もしかしたら、また一盛と小林が、あの校舎裏にいるんじゃないだろうか。
秋月は理由もなく、そう考えると、数学準備室を飛び出していた。
↓ ポチっとして押して、開いてくる窓を閉じる。
どうかよろしく m(._.)m お願いします。