金豚の肉5
翌朝。
春を感じる柔らかい温かさ。
桜の花びらが至るところ溢れる。
僕は宿泊地である田舎町の
古びた旅館を出て、
教育実習のため学校に向かって
町の通りを歩いていた。
古い商店がいくつか並ぶが、
どこも錆びたシャッターを
降ろしている。
かつては炭鉱で栄えていたと
この町に来る前に見た
ネット情報にはあったが、
今は廃村寸前といった印象だ。
だが、今の僕はそんな事は
何も気にならなかった。
昨日の衝撃的な出来事を何度も
思い出して考えてしまうのだ。
初めてのエッチな体験。
これは正直嬉しい。
だが相手は太った男の子。
これは誰にも言えない。
どう受け止めたらいいのか、
自分の気持ちすら分からなかった。
気がつくとこれから数週間、
職場となる学校に着いていた。
昨日、挨拶や校内の説明を受けたが、
今日が初めての職員朝礼だ。
きっと何かしら挨拶の言葉を
求められるだろう。
だが。挨拶といっても僕は資格だけ
欲しくてここに来ている。
だから語るほどの想いもないのだ。
とても面倒だが、もっともらしい事を
新人らしく話さなくては。
そんな事を考えながら職員用の玄関で
上履きに履き替えていると、
一人、教師らしき人が登校してきた。
「おはようございます、白鳥先生。」
この人とは昨日会っている。
三十代半ばくらいだろうか。
筋肉質なのがスーツの上からでも
すぐにわかるほど逞しい。
身体だけは体育教師かと思わせるが
スーツが似合う整った顔は
ベテラン俳優のような
知性を感じさせる。
しっかりと記憶に残っているのに、
昨日は数名の初対面の教師と
挨拶したので名前が出てこない。
誰だっただろう。
僕の表情から一瞬で全てを
理解したのか、
「小椋です。
白鳥先生は今日が初日でしたね。」
戸惑う僕に対して
淡々とした挨拶と会話を進める。
「はい、宜しくお願いします!」
なんとか返事をして頭を下げたが、
頭をあげた時には小椋先生は
職員室へとすでに歩んでおり、
僕もあとを追った。
職員室での朝の何気ない会話から
打ち合わせをして、教室へ。
学校での1日が始まる。
何もかもが新鮮だった。
寂れた町の学校なので
生徒も多くはないが、
やはり生徒たちは元気だ。
今日始めてやってきた若造である
僕を見る目は好奇心に輝いていた。
僕は若い生徒たちを見ていて、
ふとリン君の事を思い出す。
この辺に学校なんて
ここくらいしかないから、
リン君もきっと登校してるだろう
だが、僕の予想は外れる。
学校でリン君を見かける事は
なかったのだ。
そのかわりに教師たちと
話している際に彼の名を
耳にする事になる。
「白鳥先生の宿泊してる小林旅館。
生徒の家なんだよね、小林リンっていう。
ただ今、そのなんていうか・・。
そう、不登校になってて・・・。
あ、白鳥先生は気にしなくていいから。
ごめんねぇ、ほら、この町に他に
宿泊施設とか、ないからさぁ。
まぁ、関わらなければ大丈夫だから。」
リン君は不登校となっているらしい。
だが、そう話してくれた教師も
なんだかあまり多くを話そうとは
しなかったのでこちらも
踏み込んだ事は聞けなかった。
金豚の肉6を読む
春を感じる柔らかい温かさ。
桜の花びらが至るところ溢れる。
僕は宿泊地である田舎町の
古びた旅館を出て、
教育実習のため学校に向かって
町の通りを歩いていた。
古い商店がいくつか並ぶが、
どこも錆びたシャッターを
降ろしている。
かつては炭鉱で栄えていたと
この町に来る前に見た
ネット情報にはあったが、
今は廃村寸前といった印象だ。
だが、今の僕はそんな事は
何も気にならなかった。
昨日の衝撃的な出来事を何度も
思い出して考えてしまうのだ。
初めてのエッチな体験。
これは正直嬉しい。
だが相手は太った男の子。
これは誰にも言えない。
どう受け止めたらいいのか、
自分の気持ちすら分からなかった。
気がつくとこれから数週間、
職場となる学校に着いていた。
昨日、挨拶や校内の説明を受けたが、
今日が初めての職員朝礼だ。
きっと何かしら挨拶の言葉を
求められるだろう。
だが。挨拶といっても僕は資格だけ
欲しくてここに来ている。
だから語るほどの想いもないのだ。
とても面倒だが、もっともらしい事を
新人らしく話さなくては。
そんな事を考えながら職員用の玄関で
上履きに履き替えていると、
一人、教師らしき人が登校してきた。
「おはようございます、白鳥先生。」
この人とは昨日会っている。
三十代半ばくらいだろうか。
筋肉質なのがスーツの上からでも
すぐにわかるほど逞しい。
身体だけは体育教師かと思わせるが
スーツが似合う整った顔は
ベテラン俳優のような
知性を感じさせる。
しっかりと記憶に残っているのに、
昨日は数名の初対面の教師と
挨拶したので名前が出てこない。
誰だっただろう。
僕の表情から一瞬で全てを
理解したのか、
「小椋です。
白鳥先生は今日が初日でしたね。」
戸惑う僕に対して
淡々とした挨拶と会話を進める。
「はい、宜しくお願いします!」
なんとか返事をして頭を下げたが、
頭をあげた時には小椋先生は
職員室へとすでに歩んでおり、
僕もあとを追った。
職員室での朝の何気ない会話から
打ち合わせをして、教室へ。
学校での1日が始まる。
何もかもが新鮮だった。
寂れた町の学校なので
生徒も多くはないが、
やはり生徒たちは元気だ。
今日始めてやってきた若造である
僕を見る目は好奇心に輝いていた。
僕は若い生徒たちを見ていて、
ふとリン君の事を思い出す。
この辺に学校なんて
ここくらいしかないから、
リン君もきっと登校してるだろう
だが、僕の予想は外れる。
学校でリン君を見かける事は
なかったのだ。
そのかわりに教師たちと
話している際に彼の名を
耳にする事になる。
「白鳥先生の宿泊してる小林旅館。
生徒の家なんだよね、小林リンっていう。
ただ今、そのなんていうか・・。
そう、不登校になってて・・・。
あ、白鳥先生は気にしなくていいから。
ごめんねぇ、ほら、この町に他に
宿泊施設とか、ないからさぁ。
まぁ、関わらなければ大丈夫だから。」
リン君は不登校となっているらしい。
だが、そう話してくれた教師も
なんだかあまり多くを話そうとは
しなかったのでこちらも
踏み込んだ事は聞けなかった。
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