肉月~ニクツキ 02
田中悠(たなかゆう)の自宅。
今日は放課後に学習塾へ行く日だったので
帰宅は随分遅い時間になった。
悠は自分の部屋に戻ると
机の引き出しから、太い指でそっと用心深く
麻紐の首飾りを取り出した。
先端には麻紐に包まれた透明な
赤い石がついている。
その石を見る悠の瞳は警戒心が
溢れていた。
「……恐がらなくていいんだ」
大きな丸い背中をビクっと震わす悠。
頭の中ではっきりと聞こえる声。
「俺のチカラを試してみたいんだろう?」
悠は慌てて首飾りを引き出しに戻し、
勢いよく閉まった。
逃げるようにベッドに潜り込んで
大きな身体を丸める悠。
それでも声は聞こえてくる。
「…まぁ、お前の好きにしな。」
その石は数日前に通学中に偶然に見つけ、
誰かが落とした宝石かと思って拾った。
だが、拾ってよく見ると赤い石は
キレイではあるが、宝石では無いし、
まして誰かの落し物では無い、そんな気がした。
悠はなぜか捨てることが出来ず、
持ち帰ったところ、それを見た姉が
ちょうど良い大きさをした
麻布の首飾りを持っているからと、
プレゼントしてくれたのだ。
悠はその麻紐の首飾りに石を入れ、
なんとなく机の引き出しに閉まった。
しかし…。その日から悠は石の声を
聞くようになったのだ。
翌日の朝。
冷たい風が吹き込むホームで
電車を待つ人々の中に太った青年。
黒い髪は長くも短くも無い。
あまり手入れをしていない
無造作な眉毛と髪が素朴な印象を
与えるが、不潔な感じではない。
ブルーのマフラーを短い首に巻き、
耳にはイヤホン。田中悠だ。
ゆっくりと近づいてきた電車が
ホームに止まると、人々が電車に
吸い込まれていく。
田中悠も電車に乗った。
今日も学校へ行き、彼に会う為に。
学生服の中、悠の大きな胸元には
麻紐のネックレスが揺れていた。
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今日は放課後に学習塾へ行く日だったので
帰宅は随分遅い時間になった。
悠は自分の部屋に戻ると
机の引き出しから、太い指でそっと用心深く
麻紐の首飾りを取り出した。
先端には麻紐に包まれた透明な
赤い石がついている。
その石を見る悠の瞳は警戒心が
溢れていた。
「……恐がらなくていいんだ」
大きな丸い背中をビクっと震わす悠。
頭の中ではっきりと聞こえる声。
「俺のチカラを試してみたいんだろう?」
悠は慌てて首飾りを引き出しに戻し、
勢いよく閉まった。
逃げるようにベッドに潜り込んで
大きな身体を丸める悠。
それでも声は聞こえてくる。
「…まぁ、お前の好きにしな。」
その石は数日前に通学中に偶然に見つけ、
誰かが落とした宝石かと思って拾った。
だが、拾ってよく見ると赤い石は
キレイではあるが、宝石では無いし、
まして誰かの落し物では無い、そんな気がした。
悠はなぜか捨てることが出来ず、
持ち帰ったところ、それを見た姉が
ちょうど良い大きさをした
麻布の首飾りを持っているからと、
プレゼントしてくれたのだ。
悠はその麻紐の首飾りに石を入れ、
なんとなく机の引き出しに閉まった。
しかし…。その日から悠は石の声を
聞くようになったのだ。
翌日の朝。
冷たい風が吹き込むホームで
電車を待つ人々の中に太った青年。
黒い髪は長くも短くも無い。
あまり手入れをしていない
無造作な眉毛と髪が素朴な印象を
与えるが、不潔な感じではない。
ブルーのマフラーを短い首に巻き、
耳にはイヤホン。田中悠だ。
ゆっくりと近づいてきた電車が
ホームに止まると、人々が電車に
吸い込まれていく。
田中悠も電車に乗った。
今日も学校へ行き、彼に会う為に。
学生服の中、悠の大きな胸元には
麻紐のネックレスが揺れていた。
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